暗い部屋

望むことすら望めない、全てが閉じられたあの暗い部屋で、与えられたものだけを受け入れて、生きて行ければ、僕は何も憎むこともなかったし、それだけで充分幸せだったのに。

久しぶりに唐辺葉介の作品だった。あいかわらず万人に薦められる作品ではないけれど、すごく良かった。モチーフの選び方にしてもその作品の構成力にしても、実に彼らしい作品だったと思う。作品で扱われているモチーフや、ラストへの運び方というのは彼の過去の作品でも見られるものであったが、それを感じさせないような端麗な文章であった。尺は短かったが、『PSYCHE(プシュケ)』で感じたようなさっぱりしたような感覚はなくて、むしろその分、彼の作風が純化したように感じる。というか公式サイトで述べられている感想がかなり的を得ていて、僕がここでぐだぐだと感想を述べるよりもあちらでみた方がわかりやすいと思う。
まああえて個人的な感想を述べれば、始めは嫌悪感しか感じていなかったものに、だんだんと慣れていくようなそんな不思議な感覚を味あわせてもらったと思う。あいかわらず、タイトルセンスの良さは健在である。まったく胸糞悪いことしか書かれていなかったというのに、どうして少しすがすがしさすら感じさせるんでしょうね。

早く外に出たいな。外に出て、何か楽しいことをしたいです。ここは僕の知らないものだらけです。良いことも、悪いことも、たくさんあるのでしょう。せっかく生まれて来て、ここにいるんだから、少しでも多くの物を見たいな。ただ見るだけで良いんです。本当に、他には何も。

まあ個人的にはこの一言に尽きるかなあ。

話の内容について突っ込みたいところではあるけれど、この話においては蛇足だね。ということでおしまい。